巻 64, 号 52013年9月/10月

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摘みたてのサフランの花。ここから3本の柱頭だけを取り除き、 香辛料のサフランができる。野菜のタジンをはじめとするモロッコの代表料理に広く使われている。

荘厳な城塞都市、タルーダントから東へ1時間半、小アトラス山脈の不毛なスークタナ高地には、石や岩のごろつく干上がった河川敷に沿うようにして、タリオーニの村は佇んでいる。 鉱物資源豊かな山は浸食されてギザギザとした稜線を空に刻み、不毛で荒涼とした景色には、指紋のような渦巻模様が残されている。 遠くに目をやると、小さな村の随所に寺院の白い尖塔が頭を突き出している。尾根のところどころに崩れかかった砦跡が見える。 秋は日没が早い。山の背後に日が隠れ夕方になると、標高1200メートルほどのこの地はとたんに冷え込む。 町を囲む山のそこかしこには、まばらなパッチワークのように畑が散在している。たそがれ時に見えるそれらの畑は、耕されている形跡はあるものの、作物は見当たらない。

だがこの土地には毎年、一年で数週間だけ全く別の顔を見せる朝がやって来る。 いったい魔法なのか奇跡なのかーー耕された茶色の畑は、朝になると薄紫のサフランの花でいっぱいだった。どうやらこの紫の花は、夜中のうちに咲いたらしい。 単生を好むこの花の、デリケートな花弁一枚一枚に抱かれるようにして、細くて赤い糸状のものが3本見える。これがサフランの花の柱頭、 つまり香辛料サフランの正体だ。

この期間、毎朝夜明け前になると、村の農民達が畑へ繰り出す。その大半が女性だ。花びらが開いて太陽の光に柱頭がさらされる前に、摘みとり作業を終えなければならない。サフランの柱頭は日光に当たるとしぼみ、色も香りも失ってしまうからだ。

タリオーニでは10月末になると、短期間で集中的な収穫が始まる。作業はまず町から約24キロ東方、さらに1500メートル登った山地から始まり、花が最後に咲くタリオーニの畑まで徐々に下りてくる。このようにして、収穫は着実に進められる。 収穫期間は約1ヶ月。どの畑でも10日から2週間の作業だ (時折、天候に恵まれない年には、収穫期はさらに短くなる)。

サフランの生産はここ10年間でモロッコ各地に広がった。 マラケシュからそう遠くない高アトラス山脈の西側斜面にあるウリカ渓谷、フェズの南にある中アトラス山脈のりんご生産地域、セフルーとイムゼール・カンダー、リフ山脈のシェフシャウエン、北東のデブドゥなど、 産地はさまざまだが、どこもタリオーニ産の球根を使っている。だがサフランは国の農産物の2パーセントに過ぎない。

タリオーニ(人口5千人)は、モロッコのサフラン生産の中心地であり心臓部である。 肥沃な火山性土は水はけに優れ、球根を最適な状態に維持するために重要とされている。また、夏の猛暑と冬の寒さを伴う乾燥気候は、サフランの薬効を高め、あの色と独特の香りを高めるのに理想的な環境を生む。 サフランは現地のベルベル人文化と非常に縁が深く、現地農家は何世紀もかけて磨き上げられた栽培技術を活かして世界最高級のサフランを作るノウハウを身につけた。

この地域には36ほどの協同組合がある。中でも最も古く大きな組合が、タリオーニのスークタナ・サフラン協同組合だ。 1979年の創立で154人のメンバーを有するこの組合は、約1098ヘクタールの土地を所有し、そのうち275ヘクタールをサフラン生産に充てている (農産物には他にもアーモンド、オリーブ、野菜、芳香ハーブなどがある)。 組合のザフラ・タフラウィによると、2012年はここで300キロの乾燥サフランが生産された。 また、タリオーニ全体では4000キロが生産されており、これはモロッコ国内の生産高の98パーセントに相当する。 その年は収穫期に雨が降り、あまり条件が良い年ではなかったとはいえ、モロッコは依然として世界第4位のサフラン生産大国である。 タリオーニだけでもスペインの生産量の3倍を生産するというから驚きだ。

サフランはどうやってこの僻地に辿り着いたのだろうか。 「伝説はたくさんあります。詳しいところまで確認できるのは稀ですが」とタフラウィは笑顔で答えた。 タリオーニのサフラン栽培に言及した最初の文献はほんの約240年前のもの。1776年付のある契約書に「ザーフラネ」という語が3度登場する。だが歴史家の話では、サフランは500年前にはタリオーニから16キロも離れていない崖の上の大きなアガディール(穀物倉庫)に麦や油、砂糖と一緒に保管されていたらしい。

だがサフランはそれよりずっと以前の9世紀、原産地であるギリシャや小アジアから長い年月をかけて段階的にモロッコに持ち込まれた可能性が高い。

トマス・スタンキビッチ / LOOK DIE BILDAGENTUR DER FOTOGRAFEN GMBH / ALAMY
モロッコにおけるサフラン生産の中心地で人口5千人のタリオーニ。古い砦が畑を見下ろすように立っている。

サフランは、エジプトやシュメールようのような古代文明の時代にも愛用されていた。 旧約聖書には最も人気の高い香りの一つとして登場する。 「ソロモンの雅歌」の恋愛詩には「ナルドやサフラン、菖蒲やシナモン乳香の木、ミルラやアロエ、さまざまな、すばらしい香り草」というくだりがある。 また、クレオパトラはサフランのエキスで顔を洗っていたと言われている。美しさに磨きをかけ、シミを隠し、魅力を高める効果があったようだ。 古代のギリシャ人やローマ人は、サフランで髪や爪を染めた。また劇場の周りには香料としてサフランが撒かれ、品の良い爽やかな香りを放った。 大プリニウスは西暦77年頃、『博物誌』の中で、シリシア(今日のトルコ南東の沿岸にかつてあった王国)産のサフランが最も評判が高いとし、甘口ワインに混ぜて使うと記している。 ローマの料理研究家アピキウスも同様に、著書『料理について(De Re Coquinaria)』の中で、サフランをワインに加え、豚肉や内蔵、各種魚料理のソースに使うといった記述を残している。

イアン・ヘンフィルの500ページにわたる著書『スパイス・ノート(Spice Notes)』によると、西暦900年頃アラブの貿易商が、スペインにサフランを伝え、さらに小アジアからサフランの球根を持ち帰った十字軍が13世紀にイタリア、フランス、ドイツにサフランを伝えた。 さらにその100年後には、イギリスのエセックスで栽培されている。 ヘンリー8世(1509-1547年)の治世にはサフランが一部の地域に巨額の富をもたらした。中でもサフランの名産地チッピング・ウォルデンは、1514年に王の命令でサフラン・ウォルデンに改名されたほどである。さらにこの時期、まがい物のサフランを製造した者は死刑となった (ドイツでは火刑)。 イギリスではサフラン栽培が400年間続き、やがて衰退していった。

タリオーニでは10月末から1ヶ月ほどサフランが収穫されるが、畑それぞれの収穫は1週間から10日間で終わる。 花の中にある長い、オレンジ色を帯びた赤い3本の柱頭がサフランだ。短い黄色の雌しべで受粉する。サフランは長年栽培植物化が進み、今では人の手を借りずに繁殖することができない。 収穫と摘み取りは主に女性の仕事だ。

スペインは何世紀もの間、世界最大のサフラン生産高を誇っていたが、 それは昔の話。 現在はイランが世界全体の実に96パーセントを生産している。 欧州委員会が支援するクロッカスバンク・プロジェクトによると、1970年代、サフランの栽培面積はイランが3千ヘクタールであったのに対し、スペインは6千ヘクタール。だが、スペイン農業省の統計によると2005年の時点で栽培面積が83ヘクタールと大きく縮小していた。だが近年では再び2倍に増えている。

サフランの採集は手作業だけで行う。花の下部をつまんで柱頭をやさしく引き抜く。 サフラン1キロを作るのに14万から15万もの花が必要になる。 残った花びらと雌しべは捨てる。

一方、イランではサフランの栽培面積が5万ヘクタールへと急増していた。 イラン・ファールス通信は2013年初頭、同国における「赤い黄金」の生産高は年間250トンであるとしたうえで、国が2021年までに500トンに増産する目標を定めたことを報じている。イランはサフランを40カ国以上に輸出しており、スペインもイランから大量のサフランを輸入している。 取引高は巨額に上り、 ファールス通信によると、サフランはイランの非石油系輸出品目の13.5パーセントを占めている。

他にサフラン生産で有名なのは、インドのカシミール地方で、世界第2位の生産量を誇る(主に国内消費)。これにギリシャの西マケドニア地域、モロッコ、スペイン、イタリア、トルコが続く。 他にも少量ながらサフランを生産する国もいくつかある。

サフランは決して安くない。 2012年の収穫期では、スークタナ・サフラン協同組合の直売価格は1グラムのパッケージあたり32モロッコ・ディルハム(約3ドル、約300円)。1オンス(28グラム)あたり112ドル(11200円)、1ポンド(450グラム)あたり1800ドル(18000円)に相当する。 高価だが、ヨーロッパや中東、北米、さらにはマラケシュのスーク(市場)では、同様の最高級純粋サフランが、この何倍もの価格で販売されている。

世界で最も高価なこのスパイスの収穫は、手間と時間のかかる作業である上、機械化することができない。 現地の協同組合の話では、タリオーニの生産高の約90パーセントが零細農家によるものだという。

タリオーニではサフランの植え付けは8月末から9月半ばにかけて行われる。 まず浅めの溝を掘り、玉ネギ状の球根(正しくは球茎)を軽く開いた手の間隔に並べ土をかぶせる。 10月末には土の中から紫色の花が顔を出し始める。

夜明け前になると、女性達が畑の中を機敏に動きはじめる。 早朝の冷気から身を守るようにカラフルなウールのスカーフをまとい、前かがみになって花の根元を摘み取る。摘んだ花はもう一方の腕にかけた編みかごに入れる。

花でいっぱいになったかごを家に持ち帰り大きなテーブルにあけると、再び畑に戻ってこの手間のかかる摘みとり作業を繰り返すのだ。

花にはそれぞれ3本の柱頭があり、明るいオレンジから赤みがかった紫色をしている。雌しべの一部であるこの部分は、基部でつながっている。 長さは約2.5センチで、下部先端は先鋭、もう一方はわずかながら膨らみがある (このほかに花粉のついた黄色く短い雄しべも3本ある)。

サフランの風味を最大限に出すために、抜きとった柱頭は天日干しにする。他にも低温の窯で生の状態の20パーセントになるまで乾燥させる方法もあるが、モロッコではあまり一般的ではない。

貴重な柱頭は、片方の手で花の基部をつまみ、もう片方で花びらのくぼみから素早く引き抜いて採取する。 取り出した柱頭はテーブルの上の皿に集め、花びらと雄しべは床に落とす。 椅子の脚元にたまった花びらの放つ甘く酔うようなトロピカルの香りで、部屋中が満たされる。

花の摘み取り作業と同様、この抜き取り作業も、もっぱら女性の仕事だ。 早朝の作業が終わると、次はテーブルを囲んで、この簡単だが退屈な作業を繰り返しながら、長い一日を過ごす(作業はたいてい夜遅くまでかかる)。 私が今回収穫の体験をさせてもらったイグフリ村のウフソー一家では、おしゃべりをしたり、地元産のアーモンドローストをつまんだり、甘く香り高いサフランティーを飲んだりしながら作業時間を過ごしていた。

サフランの風味と香りを際立たせるには、柱頭を乾燥させ、水分を約8割ほど飛ばす必要がある。 糸状のサフランを1キロ採取するには、14万から15万もの花が必要になる。 モロッコでは天日干しするか、室内で乾燥させるのが通常だが、スペインではコンロの上についたドラム型のこし器に入れ乾燥させる。 屋外で乾燥したほうが刺激的で強い風味が得られる一方、コンロで炒る方法ではより深い香りを引き出すことができる。 最近では、モロッコでもスペイン式に切り替えはじめた農家もみられる。 とはいえ、タフラウィの話では「20家族もいない」らしい。少なくとも現時点では昔ながらの手法にこだわっている家庭が大半のようだ。

サフランは、そのさすらいの歴史と名高い特性にふさわしく、世界各地の人気料理や名物料理の多くに欠かせない存在だ。 マルセイユのブイヤベースやスウェーデンの聖ルシア祭の名物サフランパン、コーンウォール地方のサフランケーキ、ペンシルベニア・ダッチ(ドイツ系移民)が誇るチキンポットパイなど、さまざまな料理に美しい黄金の彩りと、甘いウッディな香りを添える。 インドではアイスクリームやスイーツの彩りに利用され、サウジアラビアにおいては、カルダモンとサフランで香り付けするのがアラブコーヒーの本格派だ。 とはいえ、サフランがスパイスの女王であるならば、米はその気高き王配といえるだろう。 北イタリアのリゾット・アラ・ミラネーゼ(サフランを用いたミラノ風リゾット)、スペインのパエリア、ムガールのビリヤニ、イランのポロ。これらはすべて、サフランの存在が無くしては成り立たない米料理だ。

タリオーニ近郊のサフランの看板。 この地域のサフラン農家の約9割が家族経営の小さな農家で、 35ほどある地元の協同組合がサフラン販売の大部分を手がけている。

モロッコ料理では、マリネやひき肉のケフタ(ミートボール)に少量のサフランが使われ、また羊肉、牛肉、鶏肉のタジン(シチュー)にも他のスパイスと調合してサフランが使われる。特にラマダン中はケーキの材料にもなる。 モロッコを代表するミックススパイス、ラス・エル・ハヌートにもサフランは欠かせない。

だからタリオーニでは家庭料理にサフランが多用されても不思議でない。 デザートに、フルーツサラダに砕いたサフランを少量トッピングするという、簡単で意外な使い方もある。 私が一番感動したのはサフランティーだ。現地では冬の来客のためのおもてなしとして用意する、この地方独特の飲み物だ。

歴史的に見ると、サフランは料理以外の目的でも珍重された。 女性がコール墨を使ってアイラインを描く習慣に、タリオーニでは、サフラン由来の着色剤を利用した。 タリオーニにあるメゾン・ドゥ・サフランという案内所と研究所、店を兼ねた施設の展示物によると、サフランを化粧に使うことで美的効果を高めるのはもちろんのこと、魔除けの効果も狙っていたらしい。 結婚式では、サフランで花嫁の顔に模様が描かれる。 またこの地方のカーペット職人はサフランでウールを染める。 南部の町では杉の木でできた天井の塗装に、サフランが使われている。

最も重要なのはおそらく薬としての用法だろう。更年期障害やうつ症状、慢性的な下痢といったさまざまな病の治療だけでなく解毒剤としても使われた。 アブデルハイ・シジェルマッシの権威ある名著『モロッコの薬草(Les plantes médicinales du Maroc)』では、サフランの興奮、強壮、鎮静効果についての記述がある。 彼によるとサフランは食欲を刺激すると同時に、粉末にして蜂蜜を混ぜ、腫れた歯茎にやさしくマッサージすると痛みを和らげる効果もあるという。 ジャマル・ベラクダールも『マグレブの薬草と基本的治療(Plantes médicinales au Maghreb et soins de base)』の中で同様のアドバイスをしており、歯が生え始めた乳児の歯茎にサフラン・シロップを塗ると良いとしている。

ヨーロッパは世界のサフラン生産縮小を招いたものの、ヨーロッパ産のサフランに対しては、一流品としての水準と法的保護が確保されている。 EUはギリシャの「クロコス・コザニス」(コザニ産サフラン)と呼ばれる「レッドサフラン」、イタリアの「ザッフェラーノ・デッラクイラ」(アクイラ産サフラン)、そして最も有名なものでは、スペインの「アザフラン・デ・ラ・マンチャ」(ラ・マンチャ産サフラン)に原産地名称保護を認定している。

最近ではタリオーニでも、秋のサフラン・フェスティバル、フェアトレード認証の導入、イタリアのシェフとの提携など、 名産のサフランをモロッコ国外に広める取り組みが意欲的になされている。 国連食料農業機関(FAO)は、スローフードなどの団体や自治体政府と協力し、タリオーニ産サフランの地理的な独自性を確立する動きを推進している。

厳しい規制があるからこそ、まがい物でないことや品質が保証できる。 FAOのエミリー・バンデカンデラエレは、「モロッコ政府は原産地名称と地理的表示を保証する独自の法律を策定しました。これはEUの原産地名称保護制度に合致したものです」と説明する。 2008年の法律では、若干条件が緩いIGP(地理的表示保護)制度も導入された。 現在ではタリオーニのサフラン協同組合35団体中25団体が、保護認証を受けている。

サフランはスペインでも生産されている。地中海沿岸バレンシアの米料理パエリアにも昔から使われてきた材料だ。 右側の写真のように、直火でパエリアを調理する際には、鍋底で丁寧に米を炒める。サフランはこれに独特の香りを添えてくれる。

認証により、タリオーニ産サフランの価値も上昇した。 2006年、タリオーニのサフランは1グラムあたりわずか8モロッコ・ディルハムだったが、現在は30から50モロッコ・ディルハムに値上がりしている。世界的な物価上昇も一因ではあるが、PDO認証のおかげもあるとモロッコ、アガディールにあるハッサン2世農学獣医学研究所のラーセン・ケニー教授は語る。 彼によると、「生産者グループと地域協議会も非常に積極的なマーケテイング戦略を推進した」ようだ。

バンデカンデラエレは、次のステップが「欧州委員会に登録申請し、EU加盟国でサフランを保護してもらうこと」だと言う。 これにより、生産者は仲介業者を介せずに大型の流通業者や小売店と直接取引ができるようになり、地域に還元される利益の増加を見込むことができる。 ヨーロッパが後ろ盾となったPDOは、タリオーニの土地と伝統に深く根ざしたサフランが唯一無二のものであることを保証する心強い味方となるだろう。

ミントティーはモロッコを代表する飲み物であるが、タリオーニ周辺では冬になるとサフランティーが好まれる。とくに来客用として振る舞われることが多い。 味はこっくりと甘く、香り高いのが特徴。 ここで紹介するサフランティーは、私がある収穫期の昼下がりに、オーベルジュ・デゥ・サフランの待合室でいただいたものを参考にしている。マハフード・モヒイディンのレシピだ。

  • ポット1つ分(4人分)
  • 糸状のサフラン10本、この他に飾り用として各グラスにつき1、2本
  • 珠茶大さじ1
  • 砂糖大さじ2~3

耐熱性の茶瓶または小鍋に砕いたサフラン10本分と水720mlを入れ火にかける。 沸騰したら火を止め、1分間水で冷ましながらサフランが抽出されるのを待つ。 これに珠茶を加え弱火で5分間煮出す。 火から下ろし砂糖を加えて混ぜる。

茶瓶とグラスにお茶を交互に数回移し替えて混ぜる。 色は濃い黄金の飴色が理想的。 味を見ながら砂糖を加えて甘さを調節し、 こしながら透明なティーグラスに注ぐ。サフラン1、2本を飾り、熱いうちにいただく。

ここで紹介するおしゃれなタジンは、マラケシュ初のデザイナーズホテルで、高級レストランが有名なラ・メゾン・アラベのレシピ。甘さと独特の風味を組み合わせた特徴的な味付けが魅力で、マラケシュのオレンジ畑の恵みが豊富な逸品だ。

  • 4人分
  • バター小さじ1(柔らかくしたもの)
  • おろし生姜小さじ1
  • ラス・エル・ハヌート小さじ1/2
  • シナモン粉小さじ1/2
  • ターメリック小さじ1/2
  • 挽きたての白こしょう小さじ1/4
  • 糸状のサフランを1つまみ強
  • オリーブオイル大さじ2
  • 骨付きラム脚1キロ(8切れぐらいに切っておく)
  • シナモンスティック小1本(半分に折る)
  • 赤玉ネギ中1個(みじん切り)
  • 新鮮なオレンジジュース大さじ2
  • 蜂蜜小さじ1
  • バレンシアオレンジ1個(表面をよく洗っておく)
  • 砂糖50g
  • クローブ8個
  • 飾り付けに炒りゴマ小さじ1

タジン鍋、または直火で使用できるキャセロール、大き目のフライパンなどにバター、生姜、ラス・エル・ハヌート、シナモン、ターメリック、白コショウ、サフランを入れる。 塩を加え、 オリーブオイルで湿らせた後、よく混ぜる。 これにラム肉を1つずつ入れ、裏返しながら表面にまんべんなくスパイスを塗る。 シナモンスティックの片方を加え、上に玉ねぎを散らす。 タジン鍋を中火にかけ、蓋をして調理する。時々ラムを裏返しながら肉の表面に焦げ目がつき、玉ねぎが柔らかくなるまで(焦がさないように)15分ほど煮る。 水240mlを加え、軽く蓋をして中~弱火で時々かき混ぜながら45間煮る。 水120mlとオレンジジュース大匙1を加え肉が柔らかくなるまでさらに45分間煮る。 必要に応じて水を足し、ソースが煮詰まらないようにする。薄すぎる場合は蓋をとり、水分を飛ばす。 蜂蜜を混ぜ入れ、蓋をとった状態で最後に5分間ラム肉に火を入れる。

煮ている間、オレンジの皮を剥き、果肉を取り分けておく。 ナイフで皮の内側の白い部分を取り除く(全部は取り除かない)。 皮を3ミリ程度の厚さに細長く刻む。 小さな鍋で120mlの水を沸かし、 オレンジの皮と塩ひとつまみを入れ2分間弱火で茹でる。 ザルに空け、茹で汁は捨て、鍋をすすぐ。 皮を鍋に戻し、180mlの水を加えて沸騰させる。 これに砂糖、残ったシナモンスティック、クローブを加えて混ぜる。 液体がシロップ状になり、オレンジの皮が適度な歯ごたえのある柔らかさになるまでかき混ぜながら20分ほど煮る。 残りのオレンジジュース大匙1を混ぜ、火から下ろし冷ます。

皮を剥いたオレンジの果肉にナイフを入れて白い部分を取り除く。 袋の部分に丁寧に切り込みを入れ、果肉を取り出す。 浅いボウルに果肉を入れ、鍋のシロップをスプーンでかけ、十分に味をふくませる。 盛り付けは、ラム肉を4枚の皿に取り分け、上にソースをかける。オレンジの果肉、オレンジピールの砂糖煮の順で飾り、 最後に軽くゴマを振る。


ジェフ・コーラーwww.jeff-koehler.com)はライター、旅行家、写真家、料理研究家として活躍している。 作品の多くは、新聞・雑誌に掲載され、ベスト・フード・ライティング2010にも選ばれている。 出版したレシピ集は、Morocco: A Culinary Journey with Recipes、 新刊のSpain: Recipes and Traditions.など4作品。


 

This article appeared on page 2 of the print edition of Saudi Aramco World.

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